神様は見ていた!
この、まるで人を悪の一味のように見ている男性係員に大切なお金を渡すのはしゃくに障ったが、負けたくはなかった。
その場で、鼻の穴を広げて即答した。
「払います!」
腹の財布から一万円札の束を取り出し、16万円渡した。
軍資金が半分に減った。極めて心細かったが、なぜか半分嬉しくもあった。
本当に旅が始まるのだと思えたからだ。
今日に至るまで、私に身についたいくつかの常識の中の一つにこの日の出来事は欠かせないものとなっている。
それは、人生を変えるような出来事が起きる時、人は常に試されるのだということだ。
その人にとって、直面している出来事がどれほどの価値があるものなのかを、神様は問いかけるのだ。
「今手元にあるお前の全財産が半分に減ったとしても、お前は言葉も通じない、何の当てもない外国に本当に行きたいのか?」と。
結局、神様は意外と優しかった。
土日と休日を挟んで3日間、全く日本の旅行代理店に連絡が取れなかったのだが、その後、成田で支払った16万円分は、手違いだったと言って、私の口座に振り込んでくれたのだ。